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『飴と月明かり』 Written by Takumi


 彼を想う気持ちに名前を付けるのはひどく難しいこと。
 嫌いじゃないけど、好きだというのもなんだか癪で。
 愛してるなんて感情とは全く違うところに存在しているこの気持ちは、でも身近に彼の空気を感じていないと寂しいと思ってしまうのだ。
 綺麗な薄紫の瞳に見据えられれば安心する。
 軽口を利けば心が安らぐ。
 そんな存在。不思議な存在。
 アレクサンドル・エイゼン。
 バディでもある彼の存在は、私の中で未整理の札が掛かったままだった。

 まるで泥の中を歩いているような、そんな感覚。
 瞼を開けようと必死に目を凝らしても、少し経てばまた眠っている自分に気づく。
 夜の見張り。
 ローテーションで回ってくるから誰だって同じ体験をしているのはわかる。その度に訓練で疲れた身体に鞭打って成し遂げているのも。
 だが今日だけは。
 初めての種類の訓練。戸惑った身体はいつも以上に疲労を訴え、激しく睡眠を欲していた。
「………………」
 近くの木により掛かり、月を見上げる。
 微かに雲がかかったそれをぼんやりと見ながら、1人の男を脳裏に思い描いた。
 訓練中ずっと視界に入っていた、プラチナブロンド。日が当たるとキラキラ光るそれに目をすがめながら、だが素直に綺麗だと思えた。
 綺麗だと―――
「な〜にサボってんの」
 脳天気な声と共に頭を叩かれる。
 痛い、と呟けば「生きてる証拠」なんて忌々しい返事。
 やっぱり嫌いだ、なんて思ってる側でエイゼンが飴を1つ差し出してきた。差し入れらしい。少しは良いところある。
「あと5時間でしょ。頑張らないとね」
「……わかってる」
 俯いてぶっきらぼうに答える。
 真冬のプラハ。初戦闘で失神した自分を介抱してもらってから、この妙ちきりんなバディと次第に言葉を交わすようになった。
 と言っても、一方的に相手が喋るのに対して相づちを打ってるだけだが。
「貸してみて」
 飴を包むセロファンを巧くはがせずモタついてるところでヒョイと手が伸びてきた。大人しくその手に飴を預け、剥かれてくるのを待つ。
 まるで子供のようだと、少し前まではそんな自分に呆れていたけど。単に彼が世話好きなのだということがわかった今は好きなようにさせている。
「ほら」
「……ありがとう」
 笑顔と共に手渡された飴。
 口に入れる前にお礼を言って小さく頭を下げた。
 口の中をじんわりとした甘みが広がる。ホッと息を付けば隣に座ったエイゼンが煙草に火を付けるのが見えた。
「なに?吸う?」
 視線に気づいたエイゼンが笑って手にした煙草を振る。
 綺麗な歯並びだった。
 少し見とれて、それから首を振る。
 そうか、なんて言った彼が再び煙草に口を付けるのをじっと見た。一息に吸って、気持ちよさそうに煙を吐く様を。
 何度も何度も繰り返す、綺麗な仕草。
 気がつけば手が伸びていた。横からその煙草を奪い取り、自らの口にくわえる。
「……ごほっ…げ……!」
「ああほら、なにやってんの」
 思いきりむせた。涙がにじむ目を擦り、どうしてこんなまずいものが吸えるのかと呆れる。
 だが背中を優しくさする手は大きくて温かい。
 人肌がこんなに心落ちつくものだと知ったのはいつからか。
「落ちついた?」
 ようやく咳の収まった自分を苦笑がちに見守る彼が吸っていた煙草を木の幹に押しつけて消す。
 ジュ…と小さな音がして小さな火が消えた。
「で、どうしたの。急にあんなことしちゃって」
 どうして。
 どうしてだろう。
 ただ、少しでも彼と同じモノを共有したかったから。
 少しでも、同じモノを感じたかったから。
 それだけの理由だった。
「………………」
「ま、いいけどね」
 答えない自分をどう思ったのか、視線を逸らしたエイゼンが新しい煙草に火を付ける。
 フー…と白い煙を吐く彼の姿を見ていると、遠のいたはずの睡魔がじわじわと迫ってくるのがわかった。
 閉じそうになる瞼を叱咤しながら、眠気を覚まそうと躍起になる。その拍子に、ついポロリと言葉が口をついて出た。
「キレイ……」
「んぁ?」
 間抜けな声を出したエイゼンがしばらく呆け、それからすぐ笑みを浮かべる。
「ああ、月のことか。たしかに綺麗だけど、俺の方が断然上でしょ?」
「うん」
 頷けば、一瞬目を見開いた彼が目の前。
 こんな表情もするんだ、とぼんやりした頭で考えながら、だがすぐいつもの苦笑顔に戻った彼がクシャッと頭を乱暴に掻き回した。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない」
 ご褒美だ、と先ほどもらった飴を今度は5つもらった。
 欲しいのはこんなものじゃなかったけど、黙って受け取るとそのうちの1つを口に放る。
 じわりと広がった甘み。
 美味しい、と思った。
 隣では相変わらずゆったりと煙を吐くエイゼンが今度は鼻歌なんかを歌っている。
 月明かりに照らされて、昼間とは違った光を放つエイゼンの髪をそっと盗み見て、口腔内のソレを噛み砕いた。
 あと5時間で、この時間も終わる。


眠いのは俺だ……(爆)
というわけで、自分の今の状態を誰かにわかってほしくて書いてみました(笑)←とっとと寝ろ
時期としてはラファとかが出るずっと前、「バディ・システム」の少しあとってところですか。
しかしなぜ俺が書くエイゼンはこうも口調がお姐なんだろう?(爆)
それはきっと俺が彼を正しく理解してないから……(爆死)
まだまだ道は険しいエイゼン&キャッスル。
というか、この2人の絡みの話は結局恋愛モノじゃなく、信頼関係がどうのこうの、という路線で進めて良いんだろうか?(爆)
未知の世界すぎるぞ、エイ&キャス(=w=)
そして俺は、今日も手っ取り早いホモに安堵感を覚えるのだった(笑)

 

 


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