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眠れない夜Written by Takumi


 消灯の時間も過ぎた真夜中のボルネオ基地。
 遠目に微かな明かりが見えるのみで、あたりは時々雲間から漏れる月光を除いて闇に包まれている。
 そんな中を夜遊び帰りの青年がしっかりした足取りで兵舎への道を歩く。
「ふ〜ん、ふんふんふん……♪」
 歩調に合わせた鼻歌は機嫌のいい証拠。おそらく極上の女でも抱いてきたのだろう。薄紫の瞳を弓形に細め、アレクサンドル・エイゼンは夜風にその自慢のプラチナブロンドをなびかせた。
「ん?」
 だがふと、その足取りが止まる。
 50メートルほど離れた先の木の下に人影を見かけたからだ。エイゼンは改めて自身の腕時計に目を走らせ、次いで顔をしかめた。こんな時間に外にいる人間は夜遊び目的以外だとロクなものではない。泥酔した兵士か、はたまた失恋に心を痛めた女性か。
 後者ならまだ救いもあるが、前者だとこちらにとばっちりがこないとも限らない。
「ま、無視するに越したことはないね」
 非情なまでの即決を試みたエイゼンは、なるべくその方向を見ないようにそそくさと歩調を早めた。だが木の幹にうずくまる人影をすれ違いざまにチラリと確かめたとき、見慣れたそれに思わず足を止めて素っ頓狂な声をあげる。
「お…や、キャッスル。お前こんな時間にどうしたのよ?」
「…………あぁ……?」
 うっそりと膝に埋めた顔を上げたのは、今日の訓練でも散々人をしごいてくれた鬼曹長ことキャッスルだった。だがいつもは鋭敏なまでの雰囲気がこのときばかりは全く伺えない。それどころか、とろりと濁った瞳が大儀そうに自分に向けられている。
 目線をあたりに配り、彼女の側に転がった数本のビール缶を認めエイゼンは「なるほど」と1人頷いた。
「なんだ、エイゼンじゃない………」
 どうしたってのよ、とろれつも妖しいところを見ると相当飲んだのだろう。といっても普段の彼女がウワバミ並みに酒に強いことは周知である。おそらく閉店近くまで酒保で飲み、それでもなお飲み足らずここで、ということか。
 気づかれないようにエイゼンはそっと溜息をもらした。
 たしかに彼女のお守りを父親から命令されたとはいえ、こんな私生活の面倒まで見なくてはいけないとは。ハッキリ言って契約外である。
 とはいえ、このまま放って風邪でも引かれるとやっかいだ。仕方なくその側に腰を下ろす。
「なんだ、じゃないでしょ。なにこんなところでやけ酒なんかしてんの」
「あんたには関係ないわよ」
「あのねぇ、バディのお前に風邪でもひかれると俺が困るわけ。わかる?」
 ヒラヒラと試しに眼前で手を振れば、やめろとばかりにひっぱたかれた。意識は思ったよりハッキリしてるようだ。
 だが問題はどうやってこの機嫌の悪いキャッスルを自室に帰らせるかで。
「………れないのよ……」
「は?」
 あれこれと試行錯誤をしてるところを、ボソリと呟いたキャッスルの言葉で我に返る。
 見れば再び膝に顔を埋め身体を小さく折り曲げた彼女が、くぐもった声で戸惑うように言葉を続けた。
「……眠れないのよ、全然」
「………………」
 それは初めて聞くキャッスルの弱音で。
 なんと答えて良いのか一瞬戸惑い、結局なにも言えないままエイゼンはばつが悪そうに髪をかきむしった。
 だがそんな空気を察したキャッスルがクスッと小さく笑うと、顔を上げ苦笑を浮かべる。
 その表情は酷く痛々しく、言い様のない気持ちが僅かに存在するエイゼンの良心を刺激した。
「悪かったわね、こんなこと言って」
 くしゃり、と髪をかき上げる。なにかを吹っ切るかのような仕草。
 その全てが強がりから来るものだということがエイゼンにもやっとわかる。
 不器用な彼女は、素直に側にいてくれという言葉すら吐けないでいるのだ。
「……………」
 やれやれ、とエイゼンは肩をすくめかつての友を思い描いた。キャッスル同様、ひどく不器用な生き方をする奴だった。だがその分誰よりも純粋で、そして誰よりも傷つきやすかったサウス・オブライエンを。
「………エイゼン!?」
 肩を並べて座ったところで、驚いたような声があがった。
 まさかこんな展開になるとは思わなかったのだろう。これまでのエイゼンはなにかと口を出しても、結局はキャッスルの好きなようにさせていたから。だが今は、どこかに行ってくれと頼む彼女の言葉を無視して隣を陣取った。そして次は、
「ちょ…なに考えてんのよ……!」
「別に変なことしようなんて思ってないって」
 そこまで命知らずじゃないよ、と苦笑してみせるが相変わらずの警戒心は解かれる様子がない。
 肩を並べたついでだとばかりに自らの肩に彼女の頭を乗せた、それだけなのだが。
 どうも男に不信感を持つキャッスルには強すぎる刺激だったらしい。
 あのさ、とそんな気を緩ませるために何気なく言葉を吐いた。ヘイゼルの瞳がそんなエイゼンをじっと見つめる。まるでこれから続く言葉に嘘がないかを見極めるかのように。
 そのあまりに真摯な瞳に、エイゼンは一瞬言葉を失う。あ〜…とばつが悪そうに首根っこを引っ掻いた。
「お前さ、もっと気楽に生きろよ」
「…………気楽に?」
「そうそう。俺みたいに」
「バッカじゃないの」
 眉根を寄せて苦々しく言うキャッスルはプイッとまた前を向いてしまった。
 その横顔をしばらく見つめ、エイゼンがフッと笑みを浮かべる。まるで突拍子もない笑みだった。だがそれに気づかないキャッスルはただじっと前方を見つめるのみ。
「………エイゼンっ!」
「いいから、黙ってろよ」
 その身体を抱きしめてみれば、思ったよりもずっと小さく、細かった。
 離せ、と耳元で苦しげに言う声を無視してその背を軽く叩く。
「どんなに無理してもいいけどな、俺の前でぐらい気ぃ抜いたっていいんじゃないの?」
「なに言って……」
「俺ならお前の風よけでも弾よけでもなってやるから。だからその分、素直になれよ」
 少しずつでいいからさ、とやや乱暴に赤茶の髪をかき回す。
 止めてよ、と本気で抵抗してくるキャッスルが容赦なく胸板を殴った。
 だがその力が次第に弱まってくる。拳を打ち付ける間隔が開いてくる。そしてついに、拳が動きを止めた。ガクッと倒れ込むようにキャッスルの身体がエイゼンにぶち当たる。
「おい……キャッスル?」
 大丈夫か、とその顔を覗き込んだところでエイゼンの顔に笑みが浮かんだ。
 彼が見たもの、それは……
「だからって突然すぎるんだよ、お前は」
 心地よい寝息をたてる、キャッスルの寝顔だった。
 久しぶりに味わう熟睡感からか、その表情は先ほどとはうってかわって穏やかだ。
「そうしてると美人なんだけどね〜」
 苦笑混じりに呟いて、尻ポケットから煙草を取り出した。ライターに火を付けてくわえた煙草を近づける。すぐさま煙を吐き出すそれを美味そうに吸い込み、エイゼンはプラチナブロンドをかき上げた。
「ま、一歩前進ってところか」
 気を緩めることを覚えたキャッスル。
 彼女には決して、サウルと同じ道を歩ませない。
 そうすることで自分を慰めてるだけだと、そんなことをしてもサウスは生き返らないと言われようと構わなかった。
 微かに目を細め、エイゼンは腕の中で眠る親友の妹を見つめる。
「守ってやるからな」
 契約だから、と自分を納得させエイゼンは再び煙草の煙を吐き出した。
 それは白みはじめた夜空の中で、儚げに霧散する。
 まるでとらえ所のない、エイゼンそのもののように。


う〜ん……玉砕!!(爆)
やはりわからん…俺には永遠にエイゼンを理解することなど無理なのかもしれない……
っていうか、そもそも彼の口調すら妖しいし!(爆)最近彼の存在薄いからね……って、フォローになってねーよ!(爆死)
大人しく風邪ひきユーとヴィクのラブラブ介護物語♪でもやりゃ良かったのか?(^-^;
でも書いたらなんかホモ臭くなっちまってな(爆)
「うは〜、こりゃだめじゃ!」とばかりに全部消去させてもらったよ……そして結果選ばれたリクエストが無謀とも言える今回のエイ×キャス。
無謀はやはり無謀で終わる……アデュー、俺の苦手克服講座♪
というわけで、まきこにはこんな俺を遠くから温かく見守って欲しいなり。もしくは今度のチャットで改めてエイゼン講座を!
ではでは、少しでも楽しんでいただければ幸いですm(_ _)m

 

 

 


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