『天使到来までの日々』 Written by Takumi


 好きだな、と思う瞬間。
 出撃前に祈りを捧げる横顔。目を閉じて外界を遮断する様子。
 気むずかしげな顔が、その瞬間だけフッと穏やかになるのを知ってるから。
 その隣でいつもこっそり盗み見してる。
 他の誰にも見せたくなくて、人目を避けるようにそんな彼の隣に寄り添った。
「……国と力と栄えとは、限りなく汝のものなればなり」
 アーメン、と胸の前で十字を切る彼。
 ゆっくりとその瞳が開かれる。
 ヘイゼルの瞳がまっすぐに自分を捕らえるのを待ちわびた。
「祈りは済ませたか」
 良く通る声がいつもの仏頂面を下げて尋ねる。いつものことだ。
 そのギャップの激しさに、つい笑みがこぼれた。次いでこんな彼を知ってるのは自分だけだという優越感を感じずにはいられない。
 だがそれを押し隠すかのように、手にしたウォッカを飲み干す。
 彼が顔をしかめるのを承知でガハハと大声で笑った。
「俺様にお祈りなんて必要ないのよ。好みの天使さえ来てくれれば万事解決なんだから」
 半分本気、半分冗談。
 だがそんな誤魔化しの大笑いは、パードレの言葉でいとも簡単に引っ込んでしまった。
「バカを言うな」
「…………な、なにがだよ…」
 真剣な瞳が自分を見つめる。その事実にごくりと唾を飲み込んだ。
 微かに震える指先は、恐怖か、それとも……
「また俺の仕事を増やす気か」
「…………は?」
 だが淡々としたパードレの台詞に目を丸くした。震えもピタリと止まる。
「お前のような罪深い奴が死ねば、祈りも普通の倍以上掛けないといけないからな」
「……ああ、そういうことね」
 禁欲的な司祭。
 お前に俺の気持ちが1ミリでもわかるはずないんだよな。
「心配して損したっと」
 ピロシキはうー…んと空に向かって大きくのびをする。
 ほんの少し、安心しながら。ほんの少し、残念がりながら。
 その隣でパードレが「なんのことだ」と問いつめるのを無視して広がる空を見上げた。
 まだ当分、天使は現れなくていい。


鈍感パードレと敏感ピロシキ(笑)
なんとなく書きたくなった話です……でも何が伝えたかったのかは不明(爆)
誘い受けのピロも良いが、こんなもどかしい想いを抱く彼もいいな〜……って思ったんだと思う、たしか。
つーか、今書いたばっかりなのになんで「たしか」なんだよ、俺(-_-;)
とはいえ、雑誌が発売されて確実に天バカ熱は再発してるようです(笑)
でも本当に書きたいのはロード&リック……しかし妄想、もとい理想が先走りすぎてどうにも文章にできなかったりする(-_-;)
はぁ……ラブラブな2人が読みたいな〜。

 


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