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『下克上はお好き?』 Written by Takumi
酒保にいてオレンジジュースばかり飲む彼をからかった。
いい歳をしてみっともないと。
そんな俺の台詞を苦笑しながら受け止め、昔それで失敗したんですよ、とはにかんだように笑った彼を見てどうしても酔わせてみたくなった。
いわゆる悪戯心というやつだ。他意はない。
彼に何度かビールを買わせに行かせる度に、こっそりとコップのジュースに隠し持ったビールを注いだ。
なんか変な味がします、と言う彼に、酒保だからしょうがないって、と納得させ。
結局ビールを1缶オレンジジュースで割って飲ませた。
それがこれまでの過程だ。
「予想外だね……」
ぼんやりと天井を見上げながらアレクサンドル・エイゼンはぼそりと呟いた。
下は兵舎の安っぽいパイプベッド。
ごろりと手足を投げ出した形で寝そべっていると、スッと頭上から見慣れた顔が降りてきた。よける間もなく唇を奪われる。当たった髭がくすぐったかった。
「なにがです、軍曹」
「アブドゥル、お前ね。やっぱ髭は剃った方がいいよ」
「余裕なんですね」
クスクスと唇を離しながらアブドゥルは笑いを漏らした。その顔は微かに赤い。どうやら完璧に酔っているようだ。
そんな彼を認め、エイゼンはふぅ……とため息をついた。
「まさかお前が酒飲んで性格変わるタイプとはね……人は見かけによらないって言うか、妙に納得と言うか」
つまりはそう言うことだった。
酒保を出るときから妙に目の据わっていたアブドゥルの変化に気がついたものの、運悪く彼の自室の前へとさしかかっていたために力ずくで部屋に押し込められたのだ。
普段の彼からは予想もつかないような力に、さすがのエイゼンも抵抗する間もなくベッドへ押し倒され、そして現在に至る。
「飲ませたのは軍曹じゃないですか。責任とって下さいよ」
笑いながら、ゆっくりと上着のボタンをはずすアブドゥル。その瞳の奥には恍惚とした輝きがあった。おそらくあのエイゼンを組み伏せるという事実に酔っているのだろう。
二重の酔いはこの上なくたちが悪い。
「冗談だろ」
ヘラヘラと笑みを浮かべながら、だが一方でなんとかアブドゥルを押しのけようと奮闘するエイゼンだが、どういうわけか、身体は先ほどから一向に思い通りに動かないのだ。
そんなエイゼンを見下ろし、アブドゥルは再び笑みを濃く浮かべた。
「無駄ですよ。さっき俺の買ってきたビール飲んだでしょ」
「…………あのときか」
苦々しげに言う。まさかあんなときから既に計画されていたとは。
おそらく液体状のしびれ薬などを混入されたのだろう。いったいあの短時間でどうやってそんな薬を手に入れたのか。
だがアブドゥルはその質問に答える気はないのか、全てはずし終えたボタンの隙間から肌を垣間見せながらゆっくりと上半身をかがめ、続いてエイゼンのボタンを唇ではずしはじめた。
「やらしい男だね、お前って」
「軍曹には普通のプレイでは満足していただけないと思いまして」
「その配慮は嬉しいんだけど……俺は女の子にしてもらうのが好きなのよ」
「一度経験してみればその感想も変わりますって」
妙に慣れた口調。
そういえばアブドゥルには入隊以来浮いた話が一つもなかったことを、このときになってふとエイゼンは思い出した。まさかとは思うが、よもや彼がそんな性癖の持ち主だったとは。
「ほんとお前って、俺以上に謎多き男だったんだねぇ」
こうなったら成すがままである。
エイゼンは観念したように力を抜き、アブドゥルに身を任せた。
その間も彼の唇はゆっくりと、だが確実にエイゼンのボタンを上から順にはずしていく。
時折掛かる彼の呼吸にたまらず身体がビクッとはねるのを喉奥で笑われた。
「敏感なんですね。それに肌も、思ったよりずっと白い……」
「身体は資本だからね」
微かに息を弾ませ反論したエイゼンだが、すぐさま外界にさらけ出された乳首を含まれ、うっと声をあげた。
「その強がりもいつまで続くことやら」
乳首を口腔内で弄びながらアブドゥルがくぐもった声で言う。
その間も左手を自らの唾液で湿らせ、ほったらかしにされている左の乳首をゆっくりと円を書くように撫で回した。
「……っ………ほんと、このむっつりスケベ、が……」
唾液のぬめりを借り、いつも以上になめらかに指が動く。その度にじれったいまでの快感がエイゼンの背筋を走り抜けた。
自然腰が浮き、もどかしい動きを見せる。
それを認めアブドゥルはいったん乳首から唇を離すと、満面に笑みを浮かべながらエイゼンを間近に見つめた。
「エッチな身体ですね」
その顔を至近距離で見つめ、エイゼンはふとアブドゥルの意外なまでの端正な顔に気づく。
髭で口元のあたりが隠れてはいるが、それを削除すると基地内でも有数の美青年になることは確実だった。
だが今は状況が状況である。
身近に迫った笑顔のアブドゥルの鼻を不意打ちで噛みつく。
「っつ……!」
「誰にもの言ってるのか、よく考えようね。伍長」
不敵な笑みを浮かべ、エイゼンは鼻を押さえているアブドゥルを睨んだ。
だがそれを物ともせず、いや、それどころか更に興奮を促されたアブドゥルがゆっくりと自らの唇の周りを舌で舐めた。
ぞくり、と寒気がエイゼンの身体を走ったが、そう思ったときには既にアブドゥルは激しいまでにエイゼンの下位を布越しにまさぐっていた。
「な、に……っつ、やめろって………!」
布の上からソレを軽く噛まれ、エイゼンは思わず顔をしかめた。
だが同時に突き抜けるような快感が与えられたのも事実だった。すぐさまそこは勃ち上がり、じっとりと先端に蜜を流す。
匂いをかいだのか、アブドゥルがわずかに銜えた状態のまま顔を上下に動かした。
途端、もどかしいまでの快楽がエイゼンを襲う。
「あっ…く、バカ……なにやって………」
「やっぱり軍曹のは大きいですね。ほら、俺の口だともう一杯だ」
モゴモゴと口に含んだまま喋るアブドゥルの上目遣いの瞳は、既に欲望で潤んでいる。
じわじわと追いつめられる快感に、エイゼンはたまらず目を閉じた。
だがそれは逆効果だったようで、更に卑わいな想像を促されソコはますます堅さを増したのだった。
「ほしいですか?俺の……軍曹には負けるけどそれなりに形のいいやつ」
ふと口を離し、唾液でてらつく起立した布をピンと指で弾きながら、アブドゥルは嬉しそうに自らの下位を数度擦ってエイゼンを見下ろした。
そこは既にエイゼン同様に熱く滾っている。
思わずエイゼンは生唾を飲み込んだ。この気持ちをなんと表現すればいいのかはわからない。だが、今はこのもどかしさから一刻も早く解放されたかった。
掠れた声が乾いた唇から途切れ途切れ発せられる。
その一言一言を聞き漏らすまいと、アブドゥルはやや身体をかがめた。
「……しい………挿れて、くれ……」
早く、と囁くとエイゼンはゆっくり両膝を広げる。
その様子にアブドゥルは微かに身体を震わせた。頭がクラクラするのは果たして歓喜からか、それとも残った酔いのせいか。
だがそんなことは、もうどうでもよかった。
かぶりつくようにエイゼンの唇に自分のそれを重ね、アブドゥルはがっつくようにエイゼンのズボンに手を掛けた。
だが慌てているせいか、それはなかなか脱げない。
焦れたエイゼンが自らも腰を振ってそれを助ける。
やがて露わになったエイゼンの下位。本人の性格そのままに、雄々しく高まったそれをしばし見つめ、アブドゥルはやおら身体をかがめ、含んだ。
「…………ッ……!」
エイゼンの紫の瞳が、堪えきれぬ快楽に涙でしっとりと潤む。
卑わいな音が部屋中に満ちた。
だがアブドゥルの漆黒の髪を力の限り掴み、そこへと強く押しつけながら、エイゼンは喘ぎ声に混ぜて囁く。
「アブドゥル、お前……くっ…、やっぱり……髭、剃れ…よ……」
「どうして…です」
荒い息を吐きながら、その合間にアブドゥルも苦しげに答える。
執拗に舌が絡まった。どうして、と思うほどに的確に弱い部分を攻めていく。
アブドゥルの問いに答えようと、必死に喘ぎ声を堪えながら言葉を続けようとするエイゼンだったが、
「………………くッ!」
ひときわ先端をきつく吸われ、たまらず果てた。
身体がエビぞりに反った。続いて力が抜け、ベッドに舞い戻る。胸を激しく上下させ、呼吸を整えることだけに気を回した。
───それなら、惚れてもいいからさ───
言えなかった言葉は、まるで愛の告白だ。
そんな自分の感情に気づき、エイゼンはクスッと笑みを漏らした。
まさか自分にこんな感情が残っていたとは。
そんな自分が滑稽で。
忘れるように、エイゼンは自らアブドゥルの唇にキスを求めたのだった。
これは遊びだと、そう自分に言い聞かせながら。
こ、こんなもんでどうでしょう……よろよろ……
これまで数々のカップリングを書いてきたはずだけど、こんなに濃いのは久々です(-_-;)←初めてじゃないのか(爆)
エイゼンが受け……あまりの立場の違いに彼の口調をつい忘れそうになりました(笑)
まぁ、実際いくつかの台詞はエイゼンっぽくないですがね……もうこうなったらブラック・エイゼンってことで(笑)
しかしこのカップリングがいいって言う人いるのかよ(爆)
陸さん、そのへんどうなんですか?(笑)
なにはともあれ、楽しんで……はもらえただろうが、気分が悪くなったらごめんなさいm(_
_)m
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