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『言葉の呪縛』 Written by Takumi


 宴が終わり、人々の足が出口へと自然向かう中。
 最後の挨拶をと言ってくる連中に二三言葉を返しながらも、視線は忙しなく彼を捜す。
 人より頭一つ飛び出た長身、鈍色に光るダークブロンドの髪。
 似たような容姿を見かけては高鳴る心臓を必死に押さえた。
「…イス様?どうかなさいましたか」
 俯き眉根を寄せたところで、美しく着飾った女性に話しかけられ慌てて笑みを浮かべる。
 今の自分は完全なるユーベルメンシュにして国民の期待を一身に受け止める英雄。
 そうあるべき姿を、国民が望む姿を演じなくてはいけない。
 ともすれば泣きそうなぐらい落ち込んだ気持ちを抑え込み、無理矢理の笑みを浮かべて見せた。
「いえ、なんでも…すみません、ご心配をお掛けして」
 言ったところで相手の頬が傍目にもわかるほど赤く染まった。
 それを恥じらうかのように俯いた彼女が逃げるように立ち去る。その後ろ姿を眺め、そっとため息をついた。
 何度も繰り返す、同じような反応。最初こそは戸惑いもしたが、最近ではそんな女性をいくらか冷めた目で眺める自分がいる。
 だからこそ、彼の存在が新鮮だった。
 強引なやり口。こちらの意見など聞きもしない、だが時にひどく優しい笑みを浮かべる姿が今は懐かしくてたまらない。
「……毒されたかな」
 呟けば、毎夜夢で犯される触手を思い出し一瞬身体を強張らせた。
 泣けば泣くほど執拗に追ってくる指先。くすぐるように触っては、時に安心させるかのように優しく撫でさする掌。
「やば……」
 思い出して、身体が反応しそうになった。
 いくら大人ぶって見せても身体はまだまだ成長期。想像すればそれなりの反応はあるし、そうなったところで押さえ込む力なんてないに等しい。
 自然、身体が前屈みになった。
 ばれたら…きっと赤面どころの話じゃない。
 ゆっくりと息を吐く。同じように、ゆっくりと息を吸い込んだ。それを何度も繰り返し、ようやく気持ちが落ち着いてきたところで耳元を刺激した声音に心臓がひっくり返りそうになった。
「落ち着いたか」
「……っ、おっさん!」
「クリューガーだと、何度言えば覚えるんだ」
 呆れたような口調。口元には見慣れた皮肉げな笑み。
 だがそれらを目にして明らかに安堵している自分がいる。意識していなかった身体の強張りが解けるのがわかった。
「まったく、久しぶりに会ってみれば欲情中だとはな」
「ち、…なんだよ、あんただって全然顔見せねーでどこほっつき歩いてたんだよ」
 反論をしようとしたところで思いとどまる。
 どうせ反論したところで倍返しされるのがオチだ。それなら大人しく彼の近況を伺うに留まった方が良い。
 そう思い口を開けば、意志に反してやけに不機嫌そうな声が出た。
 馬鹿みたいだ。これじゃまるで…まるで、拗ねてるみたいじゃねーか。
 一気に赤面しそうな顔を隠すように俯いた。全然成長してない自分。またからかわれるに決まってる。彼は大人で、自分は子供だから。
 時々、考える。
 もしもセックスが痛みを伴う行為だったら。
 それでも、自分たちはその行為を続けていただろうか。愛を確かめる行為だと信じて、痛みを堪えて結合し合うだろうか。
 いつも駆け引きのような、ひどく危ういバランスで行われる自分たちのセックス。
 口先だけの愛してるでも良いから言ってほしいと、何度思ったことだろう。
 行為の最中に勢いあまって口走ることはある。でもそれに対する返答は一切ない。ただ狂おしいまでの愛撫と口づけが返されるのみ。
 幾度となく身体を重ねた上で今更言葉の保証がほしいなど、愚かなことだろうか。幼いと笑われるだろうか。
 それでも…目に見える形での愛がほしかった。
「どうした」
 ハッと俯いた顔を上げた瞬間、間近に迫った彼の唇と自分のそれが触れそうになる。
「…………ッ、ご、ごめん!」
 反射的に後ろに一歩退いていた。途端、多少長く取っていたズボンの裾に靴を引っかけバランスを崩す。
「わっ……」
「なにをしてるんだ」
「……ご、申し訳ありませんでした」
 姿勢が傾いたところで、すかさず伸びてきた手が遠慮なく腰を掴んだ。倒れた反動もあって身体は自然、彼の胸元へと倒れ込む形になる。久々に感じた彼の体温に耳まで赤くなった。
 だがそれを悟られまいと、更には周囲の目を気にして口調を改め強引に身体を引きはがす。
 相手もそれを察しているからか、特に引き留めようというようなことはしない。
 それが少し寂しいと思うのは、我が儘だろうか。
「………………」
「来い」
「え、…ちょ……!」
 俯いて自己嫌悪に陥ったところを強引な掌に手首を捕まれた。顔を上げれば既に相手の顔は進行方向を向いている。止めようにも、それを許さない力でまっすぐ出口へと引っ張られる。
「ま、待ってください!クリューガー長官、その、一体……」
「黙ってついてこい」
 有無を言わさぬ口調。だがここでむやみにあがらっては無駄な視線を集めてしまう。それがわかっているから、大人しく引かれるままについていく。
 だがそれでも人々の奇異の眼差しは免れない。
 それらの視線を一身に受けながら、そっとため息をついた。
 いつだって世間は自分を放っておいてはくれない。何もかもが監視尽くしの毎日だ。
 出口を出てすぐ、横付けされた無人タクシーに押し込められた。なに、と問うまでもなく運転席に設置された画面に行き先を入力する指先に集中した。
「……え…」
 光る文字を認め、反射的に隣の男に視線を移す。返ってきたのは皮肉げな笑み。喉奥で響く微かな笑い声。
「どうした」
「だって…これ、観光コースだろ。なんで…」
「所要時間約一時間。それだけあれば十分だと思うが」
 それとももっとしてほしいか、と問われ初めてヴィクトールの言わんとしていることを知る。同時に首まで赤くなった。まるで先ほどの名残がまだ身体にくすぶっていることを見破られたかのようで、恥ずかしくてたまらなかった。
「……何週間放っておかれたと思ってんだよ」
「うん?」
「一時間なんかじゃ全然足りねーよっ!」
 言うと同時に唇に噛みついた。貪るように強引に舌を割り込ませて触れ合った舌先に自分のソレを絡める。電気が走ったような感触に身体がビクッ…と震えた。抑えきれない喘ぎ声が口端から間断なく漏れる。
「ふ、う……っ」
 だが噛みついたと思ったのは一瞬。すぐさま伸びてきた手が顎を捕らえ、唇を大きく開かせる。驚きに目を見開けば、間近に迫ったブルーグレイの瞳が刺すような視線で自分を射抜いた。
「舌」
 静かに言われた単語に誘われるように、舌を突き出す。ゆっくりと舌先が触れ合う。口腔外で舌を絡めるという痴態は嫌でも気分を高めて、どうしようもない熱が一気に下半身を刺激した。
「……ん、ぁ……」
 たまらない声がキスの合間に漏れる。その声が更に自分を煽り、行き場のない熱を早く手放したくて、必死の思いでヴィクトールの身体にしがみついた。いやらしいとわかっていても、とまらない。
 下半身を彼の太股に擦りつける。
 布越しのザワザワした感触がたまらず、肌が粟立った。
 だが筋肉が綺麗に付いたそこは反応を楽しむかのように、わざとゆっくりとした動きで起立した下肢を押し返した。たまらなかった。早く、と意志に関係なく口走る単語が更に自分を追いつめる。
 とろり…と下着を濡らす感触に再び吐息を漏らした。
 唇はしっかり合わさって、激しい愛撫の行き来がされている。でもそれだけじゃ足りない。
 もっと、熱くて確実なものがほしかった。
 それがわかっているだろうに、一向に直接的な刺激を与えない男が唇を離し、にやりと笑みを浮かべる。唾液で濡れた唇をそのままに、笑む姿はひどく官能的だった。
「よほど飢えてた、か」
「…あぁ、っ……」
 たまらず自らの唇を噛みしめる。その甘痒さすら、今は何よりの刺激だった。
 まるで催淫剤でも使われたような乱れよう。痺れともどかしさが身体全体を襲っていた。
「良いから…早、く……」
 匂い。体温。感触。声音。形。堅さ。
 連想していけばいくほど、実感すればするほど、泣きたくなるような切なさを覚える。
 淫らだとわかっていて、自らズボンの前をくつろがせた。震える指先が何度もホックを掠り、焦れったさにわけのわからない罵声を口走る。
「くそ…なんなんだよ……!」
 ボロボロと涙がこぼれた。悔しくて、悲しくて。そしてそんな自分がひどく滑稽で。
 だけど身体を覆う熱は一向に解放される気配がなくて、それが余計に苦しかった。
「ラファエル」
 頬に添えられた手。
 ブルーグレイの瞳と真っ向から目が合った。ピン…と頭に一本の筋が通る感触に我に返る。
「あ、の…俺……」
「どうしてほしい」
「ぁ…俺……」
「ラファエル」
 まっすぐな瞳。普段は皮肉に象られたそこが、今は真摯な様子で自分を見つめている。
 まるで愛してると伝えているかのように。まるで、自分だけを想っているかのように。
「……抱いて。滅茶苦茶に、してくれよ……」
 言った途端、見つめていたヴィクトールの顔がぼやけた。
 それが自分の涙のせいだと気づいたのは、彼が優しい口づけをしてくれた時。ゆっくりと上唇をなぞる舌使いに、安堵の息を吐いた瞬間だった。
「や、だ……」
 もどかしさが募る。
 我慢できずに彼の下肢もくつろがせた。隆々と猛るソコを取り出し、舌先で亀頭を舐めた。
「……っ…」
 微かに声を上げるその反応が嬉しくて、形に沿って何度も舌を這わせる。普段なら絶対にしない、娼婦のような行為。だが舌を伝わる感触は想った以上にすべらかで、同時に耳をくすぐる彼の堪えるような喘ぎ声がますます自分を興奮させていった。
「……気持ち、良いかよ…」
 ソコから唇を離し顔を見上げれば、少し笑ったヴィクトールに髪を撫でられる。それが合図のように、亀頭を口にくわえ入らない根本に手を添え一気に扱いた。
「……ん、ふ…」
 鼻でする呼吸が苦しい。でもそんなことよりも、素直に反応を返してくるソコが嬉しくて、更に唇を使っての圧力を加える。もうすっかり、準備が出来ていた。
「俺が、する……」
 邪魔な礼服を脱ぎ捨てる。ズボンを膝まで降ろし、座席にゆったりと座ったヴィクトールの身体をまたいだ。
 そっと腰に添えられた手。その感触だけで息を詰めた自分にほんの少し、笑う。
「まだ早いだろう。しっかり解さないとあとがきついぞ」
「いい」
 珍しくこちらを気遣う台詞にまた少し、笑った。らしくないやり取りが妙にくすぐったくて。
「今日は痛いのが良いんだ」
 そんな強がりを言ってみる。
 愛していると、そんな陳腐な言葉がほしいのは不安だからだ。キス一つで、愛撫一つで誤魔化されるような単純人間だったらどれだけ良かったか。
「ん…ふ、う……」
 ゆっくりと身体を沈めていく。久々の感触に身体が一瞬強張ったのがわかった。
 堅い入り口。なかなか受け入れない部分を広げようと、自らソコに手を添えて開いた。招き入れる固まりがただ愛しくて、全てを飲み込む。
「………っ、つ…あぁ…」
 もしもセックスがひどく痛みを伴うものなら。
 快楽など微塵もない、苦しいだけの行為だとしたら。
 それでも自分たちは痛みを堪えて情交を続けていただろう。
 それは漠然とした想い。だがこうして身体を重ねている瞬間だけは、そうであるはずだとどこかで確信している部分がある。
「あっ…ぁ、ん……」
 強く奥底を突かれて、たまらずヴィクトールの首にかじりついた。激しい動きに沿うように、自ら腰を動かしてみせる。
 涙が頬を伝う。快楽で何がなんだかわからなくなる。
 目元に触れた暖かい気配。それが彼の舌だとわかった瞬間、幸せすぎてまた泣けた。
 言葉なんてどうでもいいと。
 今この瞬間だけで十分なんだと。
 想う自分がそこにいた。


一体いつのリクエストなのか…ごめんなさい(T-T)
その代わり今回はいつもより2ページ近く多めに書いてます。せめてもの罪滅ぼし…。
でもその割にキャラが違ってるんだけどね(爆)
なんか俺の書くラファはいつもオヤジヴィクに弄ばれてるので、たまには積極的に行ってもらおうか…と思い実行してみたらとんでもない淫乱小僧になってしまった(笑)
色んな意味ですさんでしまったのね……。
とはいえ、頑張ってエロってみたんですが如何なもんでしょう?
お陰様で、今日一日は俺自身エロエロモードでした(笑)
張り切ってホモエロ漫画とかを読んで鋭気を養わせてもらいました(笑)
そんなわけで、少しでも多くの人が楽しんでもらえると幸いですm(_ _)m

 

 

 


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