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『血縁者バトル2』 Written by Takumi


 『貴方には負けません』
 そう宣言した夜から一ヶ月が経とうとしていた。
 ライバルは実の兄弟。世界的英雄でもある、レッドバロンことマンフレート・フォン・リヒトホーフェン。
 奪い合うべく渦中の相手は同僚にして兄直属の部下、ヘルマン・ゲーリング。
 皮肉げな物言い、傲慢で不遜な性格。だがその裏に隠された純粋で一途な部分を知ってるから。そんな風に振る舞うあの人が愛しくてたまらない。
 兄の相手だということは百も承知でした宣戦布告。
 先の見えた勝負だと笑うだろうか。
 それとも、下らないことは止めろと、あの端正な顔をやや赤らめ吐き捨てるように言うだろうか、あの愛しい人は。
「わからないな……」
 人の気持ちというモノは。
 どんな保証も、確信もない。
「これならまだ空で敵と戦ってる方が楽でいいよ」
 呟き、ロタールは隠し持っていた酒を瓶口から直接喉に流し込んだ。
 この胸の苦しみを、彼の人は微塵なりにも知っているのだろうか―――。

 コンコン……
 遠慮がちに叩かれたノックに、膝に埋めていた顔を上げる。目だけでサイドテーブルの時計を確認すれば、深夜をとっくに過ぎた頃。脇には既に中身のない瓶が1つ転がっていた。
「開いてるよ」
 けだるそうに髪をかき上げ戸外の人にそう伝えると、大きく溜息をつく。
 なぜかひどく疲れていた。無理な体勢で長時間いたせいか、それとも……
「不用心だよ、ロタール」
 いくら兵舎でも鍵ぐらいかけなさい、と入ってきた人物を見て寝ぼけた頭が一気にクリアになった。
「に、兄さん!?」
「なんだ、寝てたのか」
 苦笑を浮かばせながら慣れた様子で手近のイスに腰掛けたのは、今の今まで、それこそ夢にまで出てきた兄マンフレートだった。
 だがなぜこんな所に兄がいるのか。たしか今はドイツに帰国しているはずなのに。
 疑問が顔に出ていたらしく、クスッと笑った兄がゆっくりと足を組んで肩をすくめて見せた。
「予定より早くに解放してもらったんだ」
「そう、ですか……」
 歯切れの悪い言葉。あの宣戦布告以来、まともな会話をしていなかったからなにを話したらいいのかわからない。
 居心地の悪さに空瓶をゴロゴロと弄んだ。
 そんな自分をどう思ったのか、ふむ、としばらく考えるような素振りで見つめたあと満足そうに頷く兄が視界の端に写った。
 なにを言われるのか、こちらは気が気でない。
「その様子だと、ヘルマンとは特に進展がなかったようだね」
 ゴンッと空瓶が胸中の動揺を表すかのように部屋隅へと転がっていった。
 内心舌打ちしたいのをグッと堪え、絞り出すような低い声音で兄を見据える。余裕を身に纏った男がそこにはいた。
「………どういうことでしょうか」
「言葉通りだよ。せっかく人が一ヶ月も留守にしてあげたというのに」
 クスクスと声をあげ、心底楽しそうに笑う兄。
 その仕草1つ1つが癪に障った。
 まるで兄自らお膳立てしてもらわなければ何もできないと思われてる自分を笑われたようで。そうでもしないとヘルマンをこの手に抱くこともできないだろうと言われたようで。
 怒りを堪えるかのように、拳を握りかけた自分に気がついた。慌てて解けば、じっとりと汗に滲んだ掌が気持ち悪い。
 だがそれをすれば彼の言葉を認めたという意味になるから。
 なにがなんでも、拳を握るわけにはいかなかった。
「それとも、据え膳食わぬは男の恥という言葉を知らないのか」
「………………」
「私に変な義理を立てたわけでもあるまいし。この間の宣戦布告はただのはったりだったとでも?」
「兄さん!」
 あまりの言葉に、たまらず声を荒げた。だが目の前の兄はというと、
「図星か?それとも一応は迫ってみたのかな」
 口を閉ざす気もなく、次々とこちらを激高させるような台詞を吐いた。
 普段の兄からは考えられない言葉の数々。
「お前も一度知るといいよ、あの身体は一度覚えるとなかなか捨てがたいからね」
「くっ……!」
 気がついたときには再び拳を握っていた。握るなと何度も自分に言い聞かせていた拳を。
 そして握ったと同時に振り上げる。一ヶ月前と同じように、目の前の兄に向かって。だが……
「あっ…く………」
「そう何度も同じ手に引っかかると思ったのか」
 甘いよ、と自分の耳に囁くその声はまだ笑いを含んでて。
 投げ出した拳を受け止められ、そのついでに背中に腕ごとひねられたのだとわかったのはすぐその後だった。
 悔しさで涙すら浮かんでくる。
 空で劣り、こうして地上でも兄には勝てない自分の非力さに、ただたまらない悔しさだけを覚えた。
「負けないからな……」
 絞り出すような声音で囁いた。そうでもしないと嗚咽が漏れそうな自分がいたから。
 だがそんな自分を見抜いたのか、フッと苦笑する兄の吐息が頬に触れた。
「そうやってすぐ感情的になるから、お前にヘルマンは抱けないんだよ」
「そんなの、関係ない!」
「関係あるよ。あいつが求めてるのは安らぎだ。それを与える余裕が今のお前にはない」
 わかるだろう、と声音ばかりが優しい。
「………………ッ」
 ついに涙がこぼれ落ちた。
 なんと言われようと、泣くまいと思っていたのに。
 フッとねじられた腕が解かれたのがわかった。同時にギュッと抱きしめられる。溢れる涙を感じ慣れた唇が丁寧にすくい取っていった。
「お前を泣かせるなんて、何年ぶりだろうね」
「違う……腕が、痛いからだ………」
 負けを認めたわけじゃない、そう伝える。
 こんなことで、ゲーリングを諦めてなるものか。彼は、自分が幸せにするのだから。
「一勝一敗だ」
 だがそう兄が囁くのを耳にして。
 この勝負がまだ終わってないことを、僕は知った―――。


泣くな、ロタール!!(>0<)
くっ……個人的に泣く男が出るホモ小説は嫌いなんですが、自分で書くとどうしても泣かせてしまいます(爆)←鬼畜か!?
しかしこの小説、なぜ裏に置いてるのか……って感じの内容ですね。
まぁ、設定が一応「ゲーリングを取り合う兄弟、でもその兄弟もなんか妖しげ」ですからね(笑)←そうなんです!
この際ゲーリングが2人をこっぴどく振って、お互い慰め合う……なんて展開になってくれると嬉しいです(笑)
とはいえ、こんな展開を果たして美生さんが望んでいたかというと……絶対望んでいなさそう(笑)
やっぱなんですか?もっと擬音語とか使った方が良かったですか?(笑)<美生さん
なにはともあれ、楽しんでいただければ幸いですm(_ _)m

 

 

 

 

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