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『クロスの行方』 Written by Takumi
兵舎の廊下を、足音も荒く男が歩く。
1人は寡黙に、1人は怒鳴り散らしながら。
すれ違った仲間はぎょっと目を見開き、そんな彼らの様子を見守った。
日頃は感情らしい感情を露わにしないパードレが、明らかに青ざめた様子でとても声を掛けれる雰囲気ではない。しかも更に驚いたことに、
「離せっつってんだろ!」
そんな彼に腕を掴まれズルズルと力任せに引きずられているのは、あのピロシキなのだ。
これではまるで普段と立場が逆である。
だがそれを指さして笑うような余裕は感じられない。自然彼らを遠巻きに眺める連中は「触らぬ神になんとやら」で黙殺を決め込んでいる。
やがてそんな彼らが廊下を右に曲がったところで、連中の顔にいやらしげな笑みが浮かんだ。
廊下を右に曲がったところにあるのは、武器倉庫とは名ばかりの空き部屋。
基地内では有名な密会スポットだ。
単なる痴話喧嘩かよ、と誰かが呆れたように言う。次いで安心したようにその場に固まっていた連中がゾロゾロとバーに足を向けた。
密所での秘事はそれこそ、基地内の暗黙の認だから。
部屋に入ってすぐ、いつからか誰かが持ち込んだ簡易ベッドに放り投げられた。
ギシッとスプリングが悲鳴を上げたが、そんなことには構っていられない。すぐさま身を起こし、怒りを露わに怒鳴り返そうとしたが、
「………なにしてんだよ」
「…………………」
黙ってシャツを脱ぐパードレの様子に怒気を抜かれた。
その彼がチラリと腕を通すシャツの間からこちらを見据える。目は口ほどにモノを言うとはよく言うが、まさにそのときのパードレの目は怒りを訴えてて。
ヘイゼルの瞳が妙な輝きを宿す。
これとよく似た瞳を見るときは、大抵お互いの身体を密着させ熱にうなされたときだ。ゾクリと身体に悪寒が走った。
「なんなんだよ、こんなことして……」
カラカラに乾いた喉でそれだけを言う。
怖かった、パードレが。
こんなこと普段なら思いもしないのに。なぜかこの時だけは寡黙な彼が普段とは違う沈黙を保っているようで。
自然掌にじっとりと汗が浮かぶ。
喉奥になにかが引っかかったようで、咳の一つもしたかったがそれすら叶わない。
「抱くぞ」
「え……」
「イヤなら逃げろ」
なんの前触れもなく、乱暴に脱いだシャツを手近のイスに放り投げたパードレがそれだけを言う。
意味を理解する前に、伸びてきた腕に腰を掴まれた。そのままベッドに再び引き倒される。
息もつけないほどの早業に、俺はただ戸惑うばかりで行き場のない手を振り回した。
こんなに積極的に、あからさまに求められるのは初めてだった。
いつもは自分から誘うのに。
その気にさせるのにも時間がかかるのに。
「どうしたんだよ、お前……」
「別に」
「別にって……そんなわけないだろ…こんなことして……」
バーでいつものように酒を飲んでるときだった。
突然目の前に現れたと思ったら、有無を言わさぬ力で引きずられて。
普段ならその時間は就寝前の祈りを捧げてるはずだ。なにがあったとしたらきっとその間のことで。
でも想像もつかない。なにがパードレをここまで怒らせているのか。
「うっ…わ、なに……!?」
ギュッとズボンの上から下半身を握られた。
そのままゆっくりと上下に揺すられる。微妙な力のいれ加減ですぐさまそこは立ち上がった。耳の近くでパードレの息づかいが聞こえる。それはとても色っぽくて、思わず赤面せずにはいられない。
「バカ……なにやって、んだよ………」
「いいから」
集中しろ、と囁くと同時に耳たぶを甘噛みされて軽い喘ぎ声を発する。
そんな俺を、いつもなら微笑みすら浮かべて見守るパードレなのに。今日はまだその笑みを浮かべる余裕もないのか、伏し目がちの瞳がただ黙々と露わになる肌を追いかけるだけ。
「ひゃっ………」
ねっとりと乳首を舌でねぶられる。それだけで肌が粟立った。ゾクゾクッと言いようのない感覚が腰から背中に掛けて駆けめぐる。
いつもなら喜んで受け入れる行為なのに。
今日は間近にあるパードレの顔が堅いから集中できない。むしろ、そんな彼とは対照的に乱れることに罪悪感を感じた。
ギュッと目を閉じて拳を握る。
だが右の乳首を丹念にとがらせた舌先でチロチロと舐められ、左を親指の腹でゆっくりと撫でられれば声を殺せるはずもなく。
「んっ…あ、あ……あ、ん………」
出すまいと思っていた声も、未だ布越しに擦られる下半身も淫らな欲望に染まってしまう。
押さえようにも押さえきれず、そのもどかしさに腰を振ればパードレのそこと触れあって、更なる快楽を呼び起こしてしまった。
なにもかもが自らの身体を燃え立たせる行為に繋がる。
「も、やだって………」
恥ずかしさでたまらず目の前に迫った胸板を押しやった。
素肌になった身体は、触れただけで綺麗に筋肉がついてるのがわかる。俺と同じぐらい激しい動悸を打ってるのも、汗でしっとり濡れてることも。
「な…おちついて……んっ、話し合おう…ぜ……」
「こんな状態でか」
「ふ、んぅ…ああ、ぁ……」
乳首から離れた舌が、そのまま身体に沿って下に降りたと思ったら欲望の液にまみれたそれを含んだ。
温かい口腔内が根本ギリギリまで含んでは、器用に舌で形に添って舐めあげる。
下から上に、なぞりあげるように。時に軽く歯を立てて。
「んっ……や、…やだっ……」
確実に弱いところを攻めるやり方に夢中で彼の頭を掴む。
パードレの両腕ががっしりと足を掴んで大きく開かせる。触れる腕、肩。
着やせするタイプなんだとわかったのはつい最近だ。
そしてそれを知ってるのは自分だけだという優越感にも浸って。色っぽい身体全体にキスの痕を残したのは一週間前。
「あ、ぁ………うっ…く!」
亀頭の鈴口をチロチロと小刻みに舐められ、一際きつく吸われた瞬間果てた。
彼の口の中であることも忘れて、射精感に身体を震わせる。
ごくり、と全てを咀嚼したパードレが額に浮かんだ汗を拭いながらゆっくりと身体を起こす。荒い呼吸を繰り返す唇に啄むようなキスをされた。
「ウラジミール」
そっと耳元で名前を呼ばれれば、そっと頬に手を伸ばしこちらからもキスをねだる。
重なる寸前に「愛してる」の合い言葉を忘れず口にして。
だが舌を絡め深い口づけを繰り返すうちに、なにか腑に落ちないものを感じて唇を離した。
なにかが足りないのだ。なにか、こう、胸に当たる……
「あっ……!」
「どうした」
突如キスを中断した恋人を怪訝そうな目で見るパードレに、思いきり指さした。
指した先はさっきから何度も顔を埋めた胸板。
「お前、クロスはどうしたんだよ?」
ないのだ、パードレの象徴とも言えるクロスが。
いつもならSEXの間も首から下げてて、それが彼が激しく動く度に俺の胸をくすぐるように触れるのに。
SEXの時だけじゃない。シャワーを浴びるときも、出撃前や就寝前の祈りの時にも必ず使う、片時も離さない信仰心の象徴であるクロスが。
だがそれを問いただそうとしたところでムッツリとしたパードレの顔に出くわす。
ギュッと引き結ばれた唇がなかなか言葉を紡ぎそうにないのを見て、チュッとキスをした。
「教えろよ」
「…………壊れたんだ」
「はぁ!?」
聞き返すと苦痛に耐えるかのように、眉根を寄せたパードレが辛そうに言葉を続ける。
伸びてきた手が俺を引き寄せ、その胸に抱きしめた。
「さっき就寝前の祈りを捧げようとしたときに折れた」
「折れたって……そんなに強く握ったのか?」
「いや、いつもみたいに軽く握ってただけだ」
なのに、とすっかり肩を落としたパードレ。よしよしと背中に回した手で撫でてやればほんの少しだけ力が抜けるのがわかる。
記憶にあるクロスは結構な年月が経ってるように見えたが。
「ちなみに何年使ってた?」
「洗礼を受けたときからだ」
「…………それって何歳の時?」
「2歳だと思うが」
がっくりと、今度はこちらが肩を落とす番だった。
既に情交前座の色気など欠片も残っていない。
だがその瞬間はたと思い出す。
「…………もしかして、今のこれも単にクロスのことで情緒不安定だったからか?」
「………………」
返事がないのは肯定以外のなにものでもない。
ムカムカと湧き起こってきたのは確かな怒り。
「ふざけんな!」
当分抱かせないからな、と怒鳴りあげたところで再び唇を奪われた。そのまま勢いでベッドに押し倒される。乳首をいたずらに触れられれば放ったばかりの身体は敏感なまでに反応してすぐさまツンと立ち上がった。
「んっ………」
「十分感じてただろ」
だから許せ、と続く言葉に「バカ」と返す。
だがこの色ボケ司祭に対抗する術を、今の俺は持ち合わせてなかった。
迫ってくる身体に足を絡めて。触れあう高ぶりに声をあげれば、そこに彼自身が触れるのがすぐ。
折れたクロスはきっと彼の不安の象徴。
いつまでも続くかわからないこの関係を表してるようで。
内心では気落ちしてるだろう彼を慰めるかのように、俺はそっとその胸に十字を切ってやった。
お前のクロスはここにある―――。
切れてんのか!?これで!?
そんな感想が聞こえてきそうですが、あえて無視!(笑)
だってパードレ、家庭持ちだからあんまり激しくは切れないはずなのよ……たぶん(笑)
とはいえ、クロスが壊れただけで恋人を抱くために拉致るってのはどうかと思いますが(^-^;
そりゃ、神様がどうのって言う前に人間としてどうなんだろうね?(爆)
そしてまたこの中途半端なエロが……げはっ!(吐血)
これならまだパー×リックでもしたほうが良かったじゃなかったんですか?(爆)<ナカガミ
でも少しでも楽しんでくれたら幸いです。
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