『セクシュアル・ハラスメント』  Written by Takumi


 手が、添えられた。
 あくまでさりげなく。あくまで、偶然を装って。
 太股の上を、やや筋張った掌がゆっくりとソコを撫でさする。
 焦らすように動くそれはやがてじわじわと這い上がり、確実に目的地を目指していた。
「……っ、やめろよ…」
 這い回るそれに自らの手を重ね、動きを遮る。
 キッ…と掌の主を睨み付ければ、口端を微かに引き上げた男と目が合った。
 いつもは冷ややかなブルーグレイの瞳が、今は緩やかな笑みに象られている。
「どうした?具合でも悪いのか」
「テメーが…ぁ、ん……」
 抑制から逃れた掌が再び動きを再開した。今度はしっかりと、太股と太股の間に指先を差し込んで擦りつけるような動作を繰り返す。
 それはまだ彼の挿入を受け入れずにいた頃の、偽りの性行為を彷彿とさせた。
「…………っ」
 上がりそうになる声を必死に堪える。
 目の前では各部署の幹部が、現在の戦況と今後の対策を提示しているというのに。
 こんな場所で。こんな時に。
 人目を忍んで射精を促そうとする、ヴィクトールの趣向がわからなかった。
「あまり無理をしない方が良いぞ」
 その手が、ゆっくりとファスナーを降ろす。
 開いた微かな隙間に掌を差し込み、布地の上からソノ形を確かめるかのように優しく触れる。
「……や、…」
 詐欺だと、思った。
 いつもはあんなに乱暴なくせに。あんなに、激しいくせに。
 どうして今、こんな状況でそんなに優しく触れるのか。
「顔色が悪い」
 耳元で囁く吐息がくすぐったくて、首を竦めた。
 お前のせいだと、言い返したくても焦らすような彼の動きに声を失う。
 既にソコは痛いぐらい張っていた。
 快楽を教え込まれた身体だ。些細な愛撫にも素直に反応する。
 それがわかっていて、こちらの反応を楽しむかのようにもどかしい動きをする掌に怒りを覚えた。
「そう怖い顔をするな。退屈な会議もじき終わる」
 平然とした口調。
 だがテーブルに隠された部分ではいやらしくこちらを煽る、そのギャップに目眩を覚えた。
「…っは、ぁ……ん」
 鼻に掛かった声を気づかれないように漏らす。
 今にも痙攣しそうな身体が押さえられなかった。目が潤む。身体が、熱かった。
「……………」
 無言で相手を見上げた。
 震える唇を開く。
 ――イカセテ――
 声を発さず、形だけで伝える。
「……んっ…く、」
 途端、ソコを撫でる掌が動きを早めた。
 ぐいぐいと激しく擦り上げられ、たまらず眉根を寄せる。前屈みになりそうな身体を必死に堪え、毅然と前を向いた。
 会議は既に部署ごとの役割についてまで進んでいる。
 今回の作戦は他部署との連携からなる複雑なものだった。
「そう、ここは重要なところだから抑えた方が良い」
 囁く男の掌は、更なる快楽を与えるべく強弱をつけた動きで亀頭をなぶる。
 とろり…と溢れ出た精液が滑りを促し、たまらない悦楽を覚えた。
「……ぅ、つ…」
 緩く口を開く。息を整えようと、肩を上下させる。いつの間にか、顔も俯きがちになっていた。
 限界が近かった。
「アフォルター少佐」
 突如壇上から名前を呼ばれ、ハッと顔を上げる。
 怪訝そうな顔をした幹部の一人に見つめられ、ともすれば上がりそうになる喘ぎ声を堪え、謝罪した。
「すみません。気分が…すぐれないもので」
「それはよくない。今回の作戦ではあなたの部隊も大いに活躍してもらわなくてはならないのに…」
 なんとか平常を保って答えたところで、心配そうな声を掛けられ知らず息をついた。
 だが容赦ない掌がそんな瞬間すら見逃さないかのように、一際激しく扱きだした。
「……ッ、く……ん」
 意志とは裏腹に、身体が前屈みになる。
 その瞬間、達した。
「…………っ」
「アフォルター少佐、大丈夫ですか?ずいぶんと顔色が…悪いようですが」
 自分に集中する幹部の視線。
 不安と畏怖に染まったそれらを感じながら、冷や汗が背中を伝った。
 どう言い訳すればいい。
「今日はもう休まれた方が良いだろう。医務室へは私が運ぼう」
 フッと身体が軽くなった。
 なにをどうしたらそうなるのか、気がついた時にはヴィクトールの腕に抱えられ会議室を後にしているところだった。
「まったく…奴らに弱みを見せてどうする」
 これ見よがしにため息をついたヴィクトールに、何かが切れた。
「全部…テメーのせいだ……んっ」
 だが精一杯の罵声は、呆気なく彼の口づけ一つに誤魔化され。
 医務室で更なる辱めを受けたことは、想像に難くない。


サーバーがダウンした約一週間の間、健在し続けたBBSで勝手に盛り上がったブツ(笑)
思えば「サーバーはダウンしてるのにBBSを直リンクしてまで見に来てくれる人に感謝を込めて」という目的でやったわけだけど…恩を仇で返したって感じ?(爆)
個人的に人目を忍んで…という設定は好きです。
それによって煽られる受けも、調子に乗る攻めも色んな意味でツボで(笑)
でも今回のは…というか、いつもなんだけど、俺の書くヴィクは異常にオヤジ臭くなってしまうのが悩みの種です。
まぁ、爽やかにエロるヴィクというのも想像しにくいが……(笑)
ひとまず、そんな感じで少しでも楽しんでもらえれば幸いですm(_ _)m

 

 

 


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