Thank you St. Valentaine's Day!
Have a Good Time!
『チョコレート・キス』 Written by Takumi
騒がしい基地のバー。
テーブルの上に頂き物のチョコレートを誇らしげに積み上げた男達が、ご機嫌な様子で酒を酌み交わしている。
「7、8…っと、まぁ俺様の魅力を持ってするとザッとこんなもんよ」
そんな中、声高に数を述べた男が手にしたウォッカを勢い良く傾けた。
褐色の髪が光に照らされ、彼の顔に影を落とす。
「で、お前の方はどのくらい集まったわけ?」
上機嫌な様子で傍らの青年に話を振れば、相手も悪くはない様子で目の前に積み上がった箱の数々を眺め、
「9つだ。まぁ、この基地のエースとしては妥当な数じゃねぇの?」
そう言う割に嬉しくてたまらないといった表情で答えた。
普段はそれほど甘いものが好きなわけではない。
だが今日ばかりは特別。男として、プライドと意地を賭けた、真剣勝負だった。
「あ、ロード…」
それまで満面の笑みを浮かべていた顔が、ふとバーの入り口を通りすぎた人影を目ざとく見つけた。明るい茶色の瞳が一瞬で煌めくのを、傍らの男は見逃さない。
「悪い、俺……」
「あ〜、行ってこい行ってこい」
相手が言い終わる前にヒラヒラと手を振り見送り態勢に入った陽気なロシア人に微笑み、急いでテーブルの上に積み上げたチョコの山を胸にかき集めると、青年はイスを引くのももどかしいといった様子で立ち上がる。
「待てよ、ロード!」
転がりそうな勢いでバーを後にした青年の後ろ姿を見送りながら、髪の毛と同じ褐色の瞳を細めながら残された男がゆっくりと再びウォッカを仰いだ。
「まぁ、今日は恋人同士の祝日だからな……」
呟いたところで、先ほど青年が座っていた席に腰掛ける男が一人。
サラダを片手に静かにフォークを動かすイタリア人を認め、男は小さく笑った。
「待てよ、ロード!」
腕に収まるチョコが邪魔だった。でも本気で走れば転げ落ちてしまいそうで、仕方なく声を張り上げて目の前を行く男を呼び止める。
「………誕生日か?」
振り返った男が一瞬眉根を寄せ、何も言わずにそのうちのいくつかを取り上げた。
さりげない仕草。でも確実に歩きやすくなった態勢に、サンキュー、と呟いて男の隣に並んで歩く。
「あぁ?なに言ってんだよ…今日がなんの日か、知らないのか?」
「興味ないな」
「ったく、これだからお前って奴は……」
大げさに肩を落とし、首を振ったところで立ち止まったロードが自室のドアを開けて顎をしゃくった。
「入るのか、入らないのか」
「……入らせてもらいます」
こいつのこういうところが嫌いだった。
なんでも思い通りになると思ってる態度。そして、その通りに動いてしまう自分。
情けないとは思いつつも、いつも反抗できずにいる。
だが渋々と室内に入ってはみたものの、鼻をついたタバコの匂いに顔をしかめた。
「お前な…吸いすぎるなっていつも言ってんだろ」
肺ガンになったらどうすんだよ、と言ってみたところで奴が従うはずもないのは十分承知で。
仕方なくベッドに腰を下ろし、もらいたてのチョコの包装を一つ乱暴に開けてみた。
「へぇ…見ろよ、ウィスキー・ボンボンだ」
中から現れたのは、外見の包装に負けないくらい綺麗なチョコ。その一つをつまみ上げ、傍らで本を読んでいたロードにこれみよがしに見せてみた。
「よくそんな甘いものが食えるな」
だが特に興味はないのか、一瞬だけ嫌そうに顔をしかめた奴は再び読書に集中する。反応としては最悪だった。
本当ならここで、誰にもらったのか、ぐらいは言及してほしかったのに。
無性に腹が立って、次々と乱暴に包み紙を剥がしては綺麗に並んだチョコを口に放り込む。
じわり…と口中に広がる甘みは妙なとろみが加わって、変な感じだった。次第に熱くなる頬の感触に、小さくため息を付く。
「………ふ…ぁ……」
本を閉じる音がしたのはほぼ同時。
どうした、とばかりに目をやれば、読みかけだった本をサイドテーブルに置いたロードがゆっくりと近づいてくるところ。
「……ん、チョコ…」
食いたい?
言い終わる前に、唇が触れる。
そっと上唇を舐められたところで、それを合図にうっすらと唇を開いた。
スルリ…と隙間を器用に入って来た舌。
最初は静かに口腔内を探ってから、舌の熱さで溶けだしたチョコと絡まった。同時にチョコを互いの舌で挟むように押しつけ合う。
―――くちゅ…
甘い匂いが口中に広がる。
その間も次第に小さくなる塊が惜しくて、更にロードとの舌を絡めた。
「…ぁ……っ」
首を微かに傾ければ、伸びてきた腕に後頭部を押さえつけられる。一際繋がった唇と、密着した上半身の熱に目眩がした。
甘い匂いがする。
チョコの…それとも、タバコの匂い……。
朦朧とする頭で考える。
最後にキスをしたのはいつか。最後に身体を重ねたのは、いつだったか。
生ぬるい舌に歯茎を撫でるように舐められた。体が竦んだのは一瞬。
少しだけ、目を開く。数センチの距離にある奴の顔。乱れた前髪が額に落ちて、それが妙に色っぽい。
知らないうちに指先がそれをすくい上げるように触っていた。その瞬間丁寧に舌を絡めていた舌先がビクッと震える。
―――もしかして、感じた?
一瞬頭をよぎった考え。嬉しくて、自分からロードの首に腕を回した。
「……ふぁ…」
自分から求めたことで、今度は下肢が触れあった。感じた奴の熱と堅さに、また、くらみそうな目眩を感じる。
冷静を装っていた外面とは裏腹に、自分をほしがってるその姿が何よりも嬉しかった。
「……ロード…」
そっと唇を離し、触れるだけの小さなキスを繰り返す。
大好きな漆黒の瞳。瞼の上と、こめかみに音を立ててキスをする。
大人しく受ける奴の姿と、辺りを漂う微かな甘臭。ほんの少し差し出した舌先で、丁寧に目の前の唇を舐めた。唾液で濡れたソコは妙に淫靡で、目を閉じて舐めている自分の姿を想像しただけで竦みそうなほどの快感を覚えた。
「んっ……」
脇腹をそっと撫でられる。
それだけで崩れ落ちそうなほど、感じていた。閉じていた瞼に熱いナニかを感じる。
「や、だ……」
ゆっくりと、脇腹を触っていた掌が背骨に反って下肢へと伸びていく。微妙な動きと、確実に快楽を与える指の動きでその度に身体が小刻みに震えた。
そうなると、目前の唇を舐めるのもままならない。
たまらず奴の肩口に顔を埋めて、イヤだと首を振った。
いつの間にかこんな身体になってしまった自分。そうさせたのはロードだが、罪悪感はなぜかいつも自分に向けて発せられる。
こんな姿、見られたくなかった。恥ずかしくて、耳まで赤い顔が熱い。
「見る、なよ……馬鹿…」
辿り着いた割れ目をゆっくりと上から撫でさする掌。その感触がたまらなくて、でも感じている顔を見られたくなくて顔を埋めた肩口を必死の思いで掴んだ。
「やだ、って……」
「止めるか?」
返ってきた声に反射的に顔を上げる。見つめ合った目は、笑っていた。
からかわれてる、そうわかってるはずなのに、焦らされた身体が熱を持っててなんとかしてくれと訴えている。早く、少しでも長く、奴の指が触れるのを待っている。
でもそれを言うのはあまりに癪で、仕方なくキスをせがんだ。
目を閉じて微かに首を傾ける仕草。舌を少し覗かせれば、いつか淫靡だと言った奴の希望に添えられるだろうか。
答えはすぐ、触れた温度で知らされた。
舌先を微かに掠めたのは先ほどのチョコの名残。甘いのは、どちらの舌か。
確かめるために執拗に舌を絡めた。口端から交じり合った唾液が顎を伝い漏れる。
押し寄せる快楽に、うっすらを目を開けた。
視界の端に映ったのは、先ほどのチョコレートの包み紙。クシャクシャになったそれに、ピンク色の文字を認めた。
『Happy Valentine』
―――イエス…
ありふれた言葉に、だが力強く頷いた自分。
そして勇気を奮い立たせるように、ロードの首に再び強く腕を絡めた。
ああ、いやらしい……(赤面)←撲殺
しかし去年はナオミ、今年はホモと、どこまでもバレンタインにほど遠いネタで突き進む当HP。
この調子だと来年あたりは3Pか?(爆)
とはいえ、最近リックは結構今更のようにお気に入りになりつつあります。今現在書いてるものも彼主観だし。
問題はまた邪な内容だってことだけで……(-_-;)
なんでかなぁ…彼はこう、身体全体から虐めてオーラを発してるんですよね(笑)←そんなわけあるか
でも時はバレンタイン!恋人達の…祝日ではないよな(笑)<本文ミス
戦時中の彼らにこんなことをしてる暇があるのかはしりませんが。
ひとまずむっつりスケベのロードには頑張ってもらいたいな、と(笑)
そんなわけで、少しでも楽しんでもらえれば幸いm(_ _)m
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