『教師の責任:レッスン1』 Written by Takumi


「抱かせてほしい」
 そう小さな身体が言ってきたとき、私はひどく間抜けな顔をしていただろう。
 まさか彼が私にそんな申し出をしてくるとは、この私の頭脳を持ってしてもまったく考えられなかったからだ。
 当然答えに窮し、ポリポリと困ったように頬をかいた。
 だがそんな私にしびれを切らしたのか、短気な主人はその愛くるしい顔をしかめ詰め寄ってくる始末。
「どうなんだ、ロイ」
「はぁ……そうは言われましてもね………」
「なにか都合の悪いことでもあるのか?」
「都合……いや、そういう問題でもないんですけど、まぁ、そうかもしれませんね」
「どっちなんだ」
 今にも足踏みしそうな彼の様子に、ほんの少し笑みがこぼれた。
 ルトヴィア王室における第四皇子、ミューカレウス。
 西公の隠し玉とも誉れ高い彼は、最も純粋な血を引き継ぐ者だ。当然次期皇帝候補としての可能性も高い。
 その彼が、こんな深夜に自分の寝室を訪ね、あまつさえ抱かせてくれとは。
 いったいどういう心境の変化なのだろうか。
 自慢ではないが、彼に愛されるような行動をとったつもりは過去の一度もない。
 いや、むしろ誇り高い彼をそこらへんの一般人と同等に扱い、何度も解雇の命を受けてきたのは他でもない、この自分なのだ。
 その自分に向かってこの気高い殿下が、である。
 これを疑わずになにを疑えと言うのだろうか。
「どっちと言われましても……この通り私は男ですし、殿下も一応男です」
「一応は余計だ!」
「ああ、すみません。ですがそうしますと、同性同士で抱き合うというのはやはり理念にのっとる行為ではないかと……」
 言ったところで、クスッと笑われた。
 次いで皮肉げな笑みが少年の顔に浮かぶ。
「理念だと?それを真っ先に乗り越えようとするお前がそれを言うのか?」
 してやったりとばかりに言い募ってきた。目の前に迫った彼に、図星の意味として肩をすくめてみせる。
 ええ、そうでしょうよ。
 自分でも言ってて嘘臭いなと思いましたから。ですがね、殿下……
「あなたはご自分の身分をわかっておられない。皇帝候補がその臣下と関係を持つなど、聞いたことがありません」
 その肩を掴み、目を見据えて諭した。
 だがそれを勢いよく払いのけると、ミューカレウスはズイッと更に前に押し迫り、私の両耳を掴んで顔を近づけると、
「ご託はいい。いいから、お前を抱かせろ!」
 若い性の爆発、と言うにはあまりに真摯な瞳ではっきりを言ってきた。
 その様子に肩の力が抜ける。ふぅ…と一つ溜息をついた。
「では聞きますが、なぜ私を抱きたいなどと思うんです?まさか恋や愛なんて感情でするわけじゃないでしょうに」
 言った瞬間パッとそれまで耳を掴んでいた指が離れる。おや、と目の前の殿下に目を向けると珍しく真っ赤になった彼が口元を覆いそっぽを向いているのが目の前。
 なにかあるな、と直感でわかった。
「……きな………るんだ」
「え?」
「好きな子がいるんだよッ!」
 聞き取れなかった言葉を聞き直そうとしたところで大声で叫ばれる。
 キー…ンと耳の奥までつんざくような大声だ。思わず顔をしかめ、だが言われた言葉を頭の中で反芻してみた。好きな子……好きな子、か?
「……で、それと私を抱くこととどう関係があるんでしょうか?」
「だから!その子とそういう関係になったとき……その…困るだろ……色々とさ……」
「ちなみに、その方とはもうそのような関係に及ぶような間柄なので?」
「…………まだ告白もしてない」
「はぁ、さようで」
 一気に脱力感に襲われた。
 まったく。どういう思考回路をしてるんだ、この皇子は。
 まだ告白もしてないのに、もうSEXの心配!?その次は避妊について教えろとでも!?
 あまりの短絡的思考に、頭の中でなにかが切れる音がした。
 気がつくと、にんまりという擬音語がぴったりの笑みが顔に張り付いている。そう、いかにも偽善者という笑みが。
「でしたら、こういうのはどうでしょう」
 まるでなにか重大な秘密を教えるような、声を潜めた提案は、予想通りそっぽを向いた少年の顔をこちらに向けることに成功した。
「なんだ?」
「私が、殿下を抱くんです」
 一瞬キョトンとした顔をしたあと、見る見るうちに真っ赤に激怒する顔が見ていて楽しい。
「な、なんでこの僕がお前なんかに……ッ!」
「しっ……話は最後まで聞いた方がいいですよ」
 大声を上げようとする少年の口元を押さえ、静かに諭す。モガモガとなにか言いたそうだったのがその一言で大人しくなる。
「そう、いい子ですね。いいですか。あなたは経験がないからしょうがないかもしれませんが、性交というものは教わるには大変難しいんです」
 噛んで含めるように言うと、コクコクと素直に頷いてきた。いやはや、無知とは恐ろしいものだとこんなときしみじみ思ってしまう。
「そこで性交の最適な教わり方というのが自分のやりたい役割の逆を自ら体験する、ということなんです。わかりますか?つまり、殿下が誰かを抱きたいのなら、教えを請うときは逆に殿下自らが抱かれなければなりません」
 自分の言葉に聞き入る少年が大人しくなってきたのを確認し、そっと口元を覆っていた手を離す。
「抱かれて……それでわかるのか?その…どう抱けばいいのか、とか……」
 赤くなりながらも意見を口にする少年に、ふと皮肉げな笑みが浮かびそうになる。なにもわかっていない砂利ガキが、なにを一人前ぶっているのかと。
 だがあえてそれを顔には出さず、穏やかに頷いて見せた。
「ええ、やはり自分の身体で体験したことですから、普通の教え方とはまず理解度が違いますね。あとは……そうですね、メンタルな面でも相手の気持ちなんかがよくわかっていいんじゃないですか?」
「なら…………」
「はい?」
 再び俯くミューカレウス。だが言いかけた言葉の続きは聞かなくてもわかった。
 どうしても彼の口から聞きたくて、意地悪にも先を促す。
 耳まで赤くした彼が、恥じらいを隠せない顔でその一言を口にするのが、想像するだけでなんとも言えず官能的だった。わずかに下半身に熱が集まる。
 そんな自分に苦笑しながら、続く少年の言葉に耳を傾けた。
「それで本当にわかるなら……抱いてくれ」
 羞恥心からか、震えた声。震えた肩。
 それらを認め、私ははじめて満面の笑みを浮かべた。
 目の前の若き皇帝候補に向かい腰を落とし、頭を下げる軽い礼を取る。
「殿下の望むままに」
 格式張った言葉は、彼の羞恥心を煽るには充分だった。

「や…ちょっと、待って……」
 ベッドに組み伏せたところで、慌てたように胸板を押しやられた。
 足を開かせようと両膝に手を添えたことが原因か。
 だが大人しくそれを受ける義理はない。
「ダメですよ……大人しくしてください」
 でないと教えられません、と微笑みながらその手をやんわりと包み込み、顔を近づけ軽いキスをした。
 相変わらず震えの止まらない、華奢な身体。少年独特の青さが見える肌は吸い付くような感触で私を誘惑する。
「でも……恥ずかしい、んだよ………」
「ですが抱いてくれと言ってきたのは殿下の方でしょう?もうお忘れですか?」
「忘れてない……でも………」
 目を伏せ、押し黙る殿下。そのまつげの長さに驚かされながらも、私はやんわりとその脇腹に指を這わせた。
「……んっ………」
 ビクッと身体が弓なりにしなる。感度は最高だった。思わず口端に笑みが浮かぶ。
 どうやらただの嫌々人形を抱くに終わらずに済みそうだ。
 そっと顔を近づけ、だったら、とその耳に息を吹き込む。
「恥ずかしいなんてわからないくらい、愛してあげますよ」
「ロイ……?」
 不信げに自分を見上げてくる、緑褐色の瞳。それに微笑み返しながら、フッと力の抜けた両膝をグイッと大きく開き、瞬時に身体を滑り込ませた。
「あっ……」
「大丈夫、私に任せてください」
「や、やだっ……そこ、触る…な………」
 はじめて人の手に触れられた彼自身は、驚きのためか私の手の中で可哀想なくらい萎縮している。だがそれをやんわりと撫で、上下に指を動かした。
 ビクビクッと組み伏せた小さな身体が震える。同時に、手の中のモノも子供サイズながらに大きくなった。
「はっ……んぅ………」
「感じますね?」
「かん、じる……やっ…ロイ……」
 ひときわ扱く手に力を入れたところで狂ったように顔を振る少年。普段の傲慢さからは想像できないほどの可愛さに、自分の下半身に熱が集まるのがわかった。
 こんな子供になにを思っているのやら。自分の滑稽さに呆れ、微苦笑を浮かべた。
「ロ、ロイ……ッ!?」
 そんな自分を誤魔化すかのように、彼自身を舌で愛すために足の付け根に顔をかがめた。口に含むと同時に、彼が痙攣するのがわかった。
「やだっ……そんなのは、や…だ……」
 バタバタと暴れる彼を押さえつけ、じっくりとソレを舌で味わう。
 まだ小さいそこを丹念に包み込み、下から上へとなぞるように舐め上げた。それだけで、 既に彼が絶頂間際だということがわかる。
「ロイッ……ロイ、ロイ…ロイ……!」
 自分の名を何度も繰り返す、幼い少年。ほんのわずか、愛しさがこみ上げた。
 イキなさい、と目で促しながらさらにそこをきつく吸う。
「あっ……ん………ッ!」
 嬌声があがったと同時に口腔内に広がる青臭さ。咀嚼する様子を本人の目の前で見せることでわざと羞恥心を煽った。
 思った通り、肩を激しく上下させながらもキッと自分を睨み付けてくる年若い殿下。その様子に更に虐めたいという欲求が疼いた。
「そんな、もの……飲むな……」
「どうして?愛しいあなたが吐き出した精液ですよ?」
「お前……ッ!」
「なにを恥ずかしがることがあるんです?男であるなら射精は当然の行為でしょう?」
「それは……」
 口ごもる少年に、クスッと嬉しげな笑みが浮かんだ。その耳元に唇を押しつけながら、殊更いやらしく囁く。
「それとも、ご自分でされたことがないのですか?」
「…………」
 無言は肯定を意味した。まれにみる淡泊な性にやや驚きながら、だが更に濃くなる笑みに自分でも趣味が悪いと苦笑する。
 それを誤魔化すように、彼を掴み自身の高ぶったモノと一緒に握った。
「ロ、ロイ!?」
「触りっこですよ。殿下も、触ってください」
 やや濡れた声に、少年は目を見開き私を見つめたあと、意を決したように下半身に手を添えてきた。一瞬戸惑ったように、だがすぐさまいつものプライドの高さを見せつけるように強く。
「っつ……もう少し緩めてもらえませんか?」
「ご、ごめん!」
「いいですか?お互いのを擦り合わせるように、上下に指を動かすんです」
「……こう?あっ…ぅ……」
 自分で擦っておきながら声をあげる殿下の幼さにとつたない手の動きが、下半身に熱を集めた。自然、自身の手にも力がこもる。相手を励ますように、更に激しく動かすと同時についたばかりのくびれに指を添えグリグリと押さえつけた。
「あっ……んっ…んっ……や、ロイ……」
 苦しげに首を左右に振る殿下。その目尻からツー…と一筋の涙が流れた。それを唇で受け止め、だが更に握った指に力を込める。お互い絶頂が近いのがわかっていたから。
「やっ…も、やめ……ロイ、ロイ……ッ!」
「ああ、泣かないで。もう少し…もう少しですから」
 先走りで濡れているのは果たしてどちらなのか。
 わからないまま、どちらとも判別つかない精液が互いのモノをてらてらと濡らした。
「うっ……く…イク、イッちゃうっ……」
 シーツを握る指に力が入る。それをそっと解いてやり、指一つ一つにキスをした。だが一方で、手中の自身も既に達してしまいそうな予感に苦笑が浮かぶ。
 汗ばんだ肌。あがった呼吸。
 それら全てがお互いを狂わせていく。まるで愛し合っているような錯覚に陥る。
「バカらしい……」
 自嘲気味に呟いた。握った手に力がこもる。これ以上、我慢は無用だった。
「いいですよ」
 ややせっぱ詰まった声はどこから出るのか。
 こんな子供に夢中になったとでも?まさか……冗談じゃない。
 誤魔化すように一心に手を動かす。あふれ出る精液にまみれた手を、にちゃにちゃと卑わいな音を立てて上下に。
 当然それに耐えれず、嬌声を上げる少年が目の前。
 上気した肌がただ素直に、綺麗だと思った。
「んっ…あん……ロイ、やだ……も……ッ!」
「うっ……く……!」
 ドクドクッと放たれた白濁の液が、互いの下腹部に飛び散った。それをぼんやりと見ながら、クスクスと年甲斐もなく熱くなった自分に笑いがこみ上げた。
「まったく、あなたには負けましたよ」
 目の前で荒い呼吸を繰り返す少年の頭をクシャッと撫でる。だがまだ返事もできない状態なのか、肩を激しく上下しながらただ緑褐色の瞳が自分を見上げた。
 それに、にやり、と微笑み返し、したり顔で言葉を続ける。
「レッスン1はこれで終わりです」
「な…に………?」
 意味を理解していない顔。荒い呼吸の合間に疑問符一杯の言葉を紡ぐ。
 それを認め、満足げな笑みを深めた。
「明日はレッスン2と行きましょう」
 言葉を切り、その唇に触れる軽いキスをする。チュッと音が立つと同時に赤くなる反応が楽しくてしょうがない。
 これから毎日これが見れるのかと思うと、自然顔の筋肉が緩むのだった。
「教師として、責任もって殿下を立派な殿方にしてみせますよ」
 呆然とした顔。
 それもまた、一興だ。


イエーイ、ロリホモ小説!!(撲殺)
これはもう既に犯罪です!!(爆)ロイ、命がけの遊びです!!(笑)
ちなみに宣言するが、俺はロリは大嫌いです。いや、今言っても説得力ないけど(^-^;
この小説だって元はと言えば『俺のロリ嫌いを克服しよう!』ってな目標の下で実行した、いわば実験的小説だったんです←するな!
ミュカ、このままだと『立派な殿方』どころか『立派なホモ』になってしまうぞ(笑)
早く魔の手から逃げ出すのだ!!(>0<)
とまぁ、好きなことを言ってますが(笑)
少しでも「このカップリング良いじゃない」なんて思ってくれると嬉しいな……って、同時にその人の趣味を疑うが(爆笑)

 

 

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