『時には眠ったふりをして』 Written by Takumi


 好きだなぁ…って思う。
 珍しくソファーで寝てるあんたを見た時。
 そっと近づいて、乱れた前髪に手を触れた時。
 …―――。
 音がするんだ、胸の奥の背中の奥で。
 ――アンタガ好キダヨ――
 だから許してね。寝てるあんたにキスすることを。
 たとえ目が覚めてても、ほんの少し、もう少しだけ、眠ったふりをしていて。
 唇が触れる、その瞬間まで。

「……寝込みを襲うな」
 それまで聖人のような寝顔をしていた男の唇から、不意に不似合いとも言える低音がこぼれ落ちる。思わず身体を退けば、その拍子に背後のローテーブルに足をぶつけた。
「…ってぇ……」
「自業自得だ」
 ふん、と憎たらしいことばかりを言う男が、ゆっくりと上半身を起こす。その動きに合わせていくつかボタンを外したシャツの合間から陶器のような肌が垣間見えた。
 ドキリ、とした。思わず視線を逸らす。
 胸元に見える赤い痕。見覚えのあるそれは、嫌がる自分に無理矢理つけさせた、愛の印。キスマークが恥ずかしい、もう付けないでくれと、ただ言っただけなのに。お前にだけ恥ずかしい思いをさせるのは忍びない、なんてらしくない優しさをちらつかせたと思ったら、そのままキスマークの付け方を実践で教えられた。彼の胸板に、自分から何度も何度も唇を吸い寄せて。
 恥ずかしくて、恥ずかしくて。
 途中で何度も涙が出た。
 普通にやってと懇願したのに、最後は彼の膝の上でたっぷりと愛されてしまった。
 彼の前では、自分はあまりにも経験値が少なくて。いつだって、最後には強がりが剥がれて涙を流してしまう。声が枯れるくらい、名前を呼んでしまう。
 ヴィクトール―…と。
 そのときの痴態を思い出してしまいそうで、慌てて話題を逸らした。
「あんたこそ、珍しくソファーなんかで寝てどうしたんだよ」
「会議がな」
 長引いたんだ、と少しばかり疲れのにじんだ顔を見せて男がひとつため息をつく。
 最近の情報部の多忙さは自分も聞いていただけに、その長でもあるヴィクトールの忙しさは想像を絶するに違いない。
「そっか。そっちも大変だな」
 だからわざと、気にしていない素振りを見せる。
 もっと会いたいなんて、一緒にいたいなんて言えるわけないじゃん。
「俺も最近なんだかんだ言って忙しくてさ。E-59があれしろこれしろって、うるせーんだ」
 何てコトはない日常の会話。この場にひどく不似合いなのはわかってたけど、それでも 何か話していないとどうにかなってしまいそうで。
 次から次へと、とりとめもない話をしていった。でもそれも限界に近づいた時、
「で、一体いつになったら続きをしてくれるんだ?」
「……え…」
「まさかあれで終わりじゃあるまい?」
 意地の悪い笑みが下から自分を見上げている。瞬間、カーッと耳まで赤くなった。
「あ、あんた…!」
 どこから起きてたんだよ、と文句を言いかけた唇をそのまま塞がれる。
 触れ慣れたその感触に、情けないけど涙が出そうになった。
 本当はキスしてほしかったんだ。こんな風に、優しく、ちょっと意地悪に。
「…ん……ぁ、」
 物わかりの良い振りなんて、本当はもうしたくなくて。だけど彼の負担になるのだけは嫌だと、そう自分を納得させていた。
 彼の首に腕を巻き付かせる。首筋に顔を埋めて匂いを嗅いだ…あんたの匂いだ。
「いつまで匂ってる」
 それともキスはもう良いのか、と聞いてくる彼の声。少し笑ってるその声に、嬉しくて首筋に小さなキスマークを残す。
 教えてもらったばかりの愛の印。
 ――好キダヨ、好キダヨ――
 だから今度はもう少し、優しく俺を愛してね。


神経が病んでると、たまにこーゆーのが書きたくなるんです。甘甘がね。
で、KZでそれを書けるカップリングというと…やっぱりヴィク×ラファになるわけですよ。キング・オブ・甘甘(笑)
ラファの一人称が個人的にたまりません。俺もあんな受け欲しいっ!←え?
本当はこのままエロシーンまで行ってしまおうかと思ったけど、せっかく冒頭甘甘なのに、それやっちゃ台無しだろってことで今回は寸止めっつーか、なんつーか。大人の事情でございます(笑)
いや、でもやっぱり甘える受けは可愛い&楽しいなぁ。
既にキャラが違うって問題もあるけど、その辺はあえて無視して…2人のラブラブぶりに目を細めてやって下さいませ。
そりゃそうと、最近どうしようもなくタイトルをつけるのが苦手になりつつあります。
苦手っつーか、もうネタが尽きた…(-_-;)
いっそ「ヴィクとラファ、ラブラブの巻」とかつけてやりたい(笑)←直球だな
そんな感じですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

 

 

 

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