『嗚呼、青春』 Written by Takumi
いつもそうだった。
本当に好きな人を相手にすると、素直になれない自分がいる。
強気な態度。辛辣な言葉が口を出て相手を一瞬泣き出しそうな顔にしてしまう。
本当はこんなことしたくないのに。
笑ってほしいのに。
どうしていつも、こんな可愛くない態度をとってしまうのだろう……。
またやった、と思ったときにはもう遅かった。
「なんだその細腰は。貴様それでも男か!?」
無遠慮きわまりない態度で相手の腰を掴み、唇にはシニカルな笑みをかたどる自分。
女にしては十分すぎるほど逞しい肢体。繊細などという言葉とは縁遠い、角張った顔。
クラスメートですら自分には一目置いている。
それが私、サウマフィだ。
はじまりはほんの些細なことだった。
士官学校の体育の授業。着替えを終え、各人がグラウンドへと出ていく際にからかわれている「彼」を認めた際にカッとした瞬間。
本当は「やめろ!」と言いたかったのに。
実際自分が口にしたのは、そんな仲間達と同じく彼を卑下する言葉だった。
「やめてくれよ、サウマフィ」
女とは言い難い体躯をした自分に腰を掴まれ、どう対応していいのかわからない彼、ケインはその端正な顔に苦笑を浮かべた。
その顔を認め、一瞬胸がキュンと痛む。
色白の肌、サラサラの栗毛、ほっそりとした儚げな体躯は自分とは全く縁のない物だった。だからこそ、そんな彼に胸がときめいた。
その気持ちに気づいたのはほんの数ヶ月前だ。
それまでは軟弱で意志の弱い奴だと思っていた。
「誰じゃ、ケインっ!?」
叫ぶと同時に渾身の力で背後の男を殴り飛ばした。
不意打ちのおかげか、あっけなく後ろに吹っ飛んだ相手を見向きもせずに出口へと走り寄る。
「くそ……単なるリサイクルじゃねーのか!」
とんでもない作品はいつまで続くのか。
背後でサウマフィの心の詩を聞きながら、俺は無理矢理扉をこじ開けた。