青年系A

それはボーイズ・ラブに於いての王道設定、高校生同士。
性に目覚めた2人が友情から愛情へと成長していく様はこれいかに。
若さ故の性の暴走も見逃せません。

 


『青臭い青春』

 見慣れてるはずの階段が、今日はいつもと違って見えた。⇒必ず受けの一人称でなくてはならない
 少し遅れてついてくる足音。
 微かな息遣いさえも聞こえてきそうで、高まる胸をさりげなく押さえつけた。
「悪いな」
 低い、だが良く通る声が耳元近くで聞こえる。思わず竦みそうになった足を鼓舞して、何気ない風を装う。
「なに気使ってんだよ。誘ったのは俺の方なんだから……あ、ここ俺の部屋。汚いけど文句言うなよ」
 辿り着いたドアを開けて、シドーを室内に迎える。
 すれ違い様に微かに匂った汗の臭いに、今日の真夏日を思い出す。
 久々の休日。部活がない日曜日に俺達が会ってるのにはわけがあって。⇒主人公達は部活(運動部)をしていなければならない
「そのへん、適当に座ってろよ」
 お茶持ってくるから。
 別に気を使ってるわけじゃないけど、今はまだシドーと2人きりで部屋にいる心構えが出来てない。台所に向かいながらバクバクとうるさい心臓に叱咤した。
 はじまりはほんの些細な一言だった。
 シドーの好きなバスケ選手が特集されてた雑誌を俺が持ってて。そのことをふと口にしたことでトントン拍子に今日のことが決まってしまった。
 だってあの無表情なシドーが珍しく嬉しそうな顔をするから。断れるわけないじゃん。
「俺ってとことん甘いの……」
 冷蔵庫から麦茶を取り出し、ガラスのコップにたっぷりと注ぐ。⇒夏は麦茶がベスト
 ついでにもらったばかりのカステラをいくらか拝借して、緊張気味に階段を上がった。
 あのシドーと2人きり。
 元々部活のメンバーの中では仲は良かった方だけど、家にまで呼ぶのは今回が初めてで。
 おまけに私服姿のシドーなんか見るの初めてで…ちょっと、いや、かなり……格好良かった。⇒惚れた弱みを披露する
「おまたせ」
 ドアの前で気持ちを落ち着けて、笑顔を貼り付けた顔で勢い良く中に入る。
 事前に入れておいたクーラーがひんやりとした空気で迎えてくれた。顔の火照りを冷ますにはちょうどいい。
「悪いな」
 再び同じように謝罪の言葉を口にしたシドーはフローリングの床にあぐらをかいてこちらを見上げている。
 その首元にうっすらと汗が浮かんでるのを認め、小さく生唾を飲んだ。
「あ…えっと、温度下げた方がいいか?」
「いや、このままでいい」
 グイッと右腕で汗を拭ったシドーが差し出した麦茶を美味しそうに飲む。上下する喉仏が色っぽいなんて思ってしまう自分の邪さに涙が出そうになった。⇒自分の気持ちを嫌悪するぐらいが良い
「ラファエル」
 低い声音で名前を呼ばれる。なに、と微かに潤んだ瞳を向ければ漆黒の瞳がそれに応えた。
「雑誌、見せてもらえるか」
「あ…わりぃ」
 拍子抜けってやつ?⇒超一人称を活用すべし
 期待してた自分も馬鹿だけど、頭を冷やすにはちょうど良かったかもしれない。
 引っ込んだ涙に安堵しつつも用意していた雑誌を取りだしてシドーに放り投げる。表紙に写った人物を見ただけで奴の顔が微かに微笑んだ。
 嫉妬…なのかな?少しだけ、胸が痛んだ。
「じっくり読んでけよ。俺、その間寝てるから」⇒無意識の誘いを掛けられるのが優等生
 どうせなら集中して読ませてあげたい。
 そんな配慮から俺はベッドに寝ころんだ。少しだけ、シドーが変な顔をする。
 失礼な奴だって思われてるのかな。家に呼んでおいて、客を放ったらかしにするなんて。
 まぁいいや。
 もやもやした気持ちを振り払うかのように目を閉じる。時計の秒針の音と、ページをめくる音だけが規則的に流れた。
 それからどのくらいの時間が過ぎたのか。
 唇になにか柔らかいモノが当たっている感触に目を覚ました。⇒攻めは容易に堕ちないといけません
「……ん…なに………?」
 寝返りを打とうとして、誰かが身体の上に覆い被さっている事実を知る。
 驚きで叫びそうになるのを、耳元で囁かれた声になんとか堪える。
「ラファエル」
「シ、シドー!?」
 驚いた、なんてもんじゃない。
 どうしてシドーが…俺を組み伏せてるんだろう?冗談?それとも、俺をからかってる?
 でも目の前に迫ったシドーの顔はそんなものとは縁遠い、真剣そのものだった。
「なに…やってんだよ……」
 情けないけど、声が掠れた。
 それはきっと少しの恐怖と、沢山の期待から。
 触れそうなほど近い距離に迫った唇から目が離せない。もしかしてさっきのは……キス?シドーが、俺にキスしたのか?
「嘘だろ……」
「なにが?」
 こんな状況にあっても、シドーの声は落ち着いてた。押さえつけられた両手首が痛い。⇒攻めは基本的に冷静沈着
 微かに顔を歪めると慰めるように、こめかみに唇が触れた。
 ビクッ…と反射的に身体が震える。⇒嘘みたいに感じなさい
「だって…シドーが俺にこんなことするはず…ない……」
「俺がしたらおかしいか」
 無表情な顔。いつからか、この能面のような顔に微かな表情があることに気づいていた。
 微かな笑み。微かな怒り。
 じゃあ今は?今のシドーは、どんな表情を浮かべてる?
「……ぁ………」
 自分のあげた声に耳まで赤くなった。だって、シドーが…そんなところ、触るから。
 おまけにそんな顔して…俺が今まで見たこともない、色っぽいシドー。
「嫌ならやめるぞ」
 こんなことをしてるのに、声は飽くまでストイックだ。
 それが焦れったくて、たまらず目の前の首に腕を絡みつけた。
「嫌じゃ…ない」
「そうか」
 微かに嬉しそうなシドーの声。
 それを聞くだけで、俺も嬉しくなってしまう。
「なぁ……」
「なんだ」
「さっき……キス、しただろ」
 髪をすいてた手が一瞬動きを止める。図星か。
 でもあのシドーが寝込みを襲うなんて、なんだか「らしく」なくて笑った。
「笑うなよ」
「だってさ……っ…シドー!」
 いきなりジッパーを引き下ろされて、直接ソコを握られた。驚いて思わず声をあげる。⇒ここを触らないとナニもはじまりません
 でもそれを気にする様子もなく、シドーは容赦なく刺激を与える。
「……ふ…ぅ……あっ…」
「親は?」
「…旅行…行ってて、今日は帰ってこねぇ……よ」⇒もしくは深夜帰宅か海外赴任
 まったく、なんて都合のいい日を選んでしまったんだろう。これじゃあまるで最初から全て、期待してたみたいだ。
 でもそんな想いもシドーの指の動き一つでどうでもよくなる。
 クーラーを利かせたはずの部屋で、なぜか俺達は汗を浮かべて息を荒くして。
 それでもしっかり、幸せなんかを感じてる辺り俺も現金だな、なんて思っちゃって。
 目の前のシドーの身体にしがみついて変な青春なんかを感じてる。
「……あ!」
「どうした」
 突如上げた声に、驚いたようにシドーが顔を上げた。その瞳が欲情に潤んでいるのを認めて、ほんの少し優越感に浸る。
 いや、でも今はそんなことより。
「………明日、練習試合あるのに」⇒常に健全なオチを控えておきましょう
 俺の言葉に、シドーが珍しく声をあげて笑った。
 気取らず、飾らず。
 俺達は、俺達らしく行けばいいみたいだ。⇒自己結論を出さなくてはいけません

 

 

 

いかがでしたでしょうか?
今回の講義で少しでも高校生同士のボーイズ・ラブの定義を理解してもらえると
講師冥利につく、というものです。
更に他の講義が受けたいという熱心な受講生は、以下の通路からどうぞ。
本日はご清聴、ありがとうございました。

 

講義終了

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